



終戦記念日を目前に迎えた今回の放送は、いつもの「働き方」や「キャリア」の話題とは少し趣きを変え、「平和」と「音楽」、そして「記憶をつなぐ仕事」を静かに、しかし、深く考えさせられる回となりました。今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」にお迎えしたゲストは、広島出身で理化学機器メーカーに勤めながらキャリアコンサルタントとしても活動する松本恭典(まつもときょうてん)さん、そして、一般社団法人 国際親善音楽交流協会(IGMEA)のコンサート・マネージャーである岩本絵美(いわもとえみ)さん。8月15日という特別な日にふさわしいお二人の言葉が、リスナーの胸に静かに響きます。
話の軸となるのは、広島市で開催される「平和記念コンサート」。会場は、原爆投下の歴史と深く結びつく「カトリック幟町教会」。実はこの場所が、松本さんの母校・小学校の目の前にあり、幼少期に遊び場として親しんだ“原風景”であることが語られます。さらに、岩本さんのご家族や出身校とも不思議な縁でつながっており、広島という土地が持つ「記憶の連なり」が、今回の企画そのものを象徴しているようです。
松本さんは被爆二世として育ち、原爆や戦争の話を「特別な出来事」ではなく「日常の延長」として聞きながら成長してきた世代。80年という節目を迎えた今、「知っているつもり」になりがちな平和を、もう一度きちんと考え直す必要があると語ります。一方、岩本さんもまた、音楽とともに育ち、平和学習と音楽が常に隣り合う環境で生きてきた一人。音楽は娯楽である以前に、人の心をつなぎ、「記憶を未来へ手渡すための手段」だという言葉が印象的です。
番組後半では、IGMEAがコロナ禍という未曾有の困難の中で、2021年に広島、2022年に長崎で平和コンサートを実現してきた背景が語られます。海外公演がすべて中止となり、合唱や演奏すら制限された時代。それでも「ただ演奏するのではなく、いまだからこそ意味のある音楽を届けたい」という想いで、ベートーヴェンの「第九」を夏に演奏するという、異例の挑戦を選んだこと。マスク着用、少人数、練習場所も限られる中で、それでも人々が集い、音を重ねた事実は、音楽の力そのものを物語っています。
この放送が心に残るのは、平和を「大きな理念」として語るだけでなく、一人ひとりの人生、仕事、原体験と結びつけて語られているからです。キャリアとは職業選択だけではなく、「何を大切にして生きるか」を問い続ける営みであること。そして、音楽もまた、人生の節目や記憶と深く結びつき、人を前へ進ませる力を持っていることが、自然に伝わってきます。
終戦から80年。記憶が遠のき、体験を直接語れる人が減っていく中で、私たちは何をどう受け取り、次の世代に渡していくのか。この回は、答えを押しつけるのではなく、「考える時間」をそっと差し出してくれる放送回です。静かな語りの中に込められた想いを、ぜひ音声でそのまま受け取ってみてください。きっと、聴き終えたあと、あなた自身の「大切にしたいもの」について、自然と考え始めているはずです。
◆一般社団法人 国際親善音楽交流協会(IGMEA)
http://www.igmea.com/
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