竹島弘幸さま(外国人就労支援・キャリアコンサルタント向け更新講習・行政講習の開発)

50代後半で大手企業を退職し、あえて「ゼロから自分の道をつくる」選択をした人は、どんな景色を見ているのか。今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」では、その問いに真正面から向き合う、非常に濃密な時間が流れました。ゲストは、元・大手通信会社の役員という安定した立場を手放し、2024年にリブート合同会社を立ち上げた竹島弘幸さんです。

番組前半で語られるのは、「なぜ辞めたのか」という問いへの率直な答えです。仕事が嫌だったわけでも、評価に不満があったわけでもない。海外事業の最前線で、ミャンマーやモンゴルといった国々に関わり、役員として責任ある立場も経験してきた。そのうえで竹島さんは、「このまま60歳、65歳まで働く姿が、自分にとって本当に納得できるのか」を自分自身に問い続けていたと語ります。その迷いが決定的に形を変えたのが、2021年2月、ミャンマーで起きた軍事クーデターでした。

突然の政変により、現地法人の撤収を余儀なくされ、現地スタッフの雇用を守れなくなる現実。経営者として「会社都合の解雇」を決断せざるを得ない立場に立ち、その後、スタッフ一人ひとりと向き合いながら、次の仕事や生き方を一緒に考え続けた経験が、竹島さんの中に深く刻まれます。このとき、資格も肩書きもないまま行った“キャリア相談”が、「人の人生に寄り添う仕事をしたい」という思いへとつながっていった――その語りは、決して美談ではなく、責任と葛藤の重さを伴ったリアルなものでした。

やがて国家資格キャリアコンサルタントを知り、学び始める過程も印象的です。心理学やキャリア理論の背景に、哲学や思想が流れていることに気づき、若い頃から親しんできた読書体験と一本の線でつながっていく感覚。学ぶほどに面白くなり、気づけばキャリアの世界に深く没頭していったと語ります。50代後半での独立は、決して勢いではなく、長い内省と準備の末の決断だったことが伝わってきます。

さらに後半では、「国境なきキャリコン」という言葉が象徴的に登場します。政治や環境によってキャリアを断たれてしまう人たち――ミャンマーやウクライナの人々の現実に触れてきたからこそ、「本人のせいではない理由で人生が止まる」ことへの問題意識が強くなったという竹島さん。現在は企業研修や顧問業務に加え、外国人支援、日本語教育、さらにはメタバース空間でのキャリア相談にも挑戦しています。アバター同士だからこそ生まれる心理的安全性、場所や顔出しに縛られない相談の可能性など、キャリア支援の未来像が具体的に語られる場面は、非常に刺激的です。

この放送が心に残るのは、「独立=成功談」では終わらないからです。40代後半からの迷い、50代での恐怖、収入や将来への不安。それらを正直に語ったうえで、それでも「動き続けること」、「口に出していくこと」が、偶然の出会いや次の扉を開いてきたと振り返ります。キャリアに正解はないけれど、立ち止まり続けるより、小さくても動くことで景色は変わる――そんなメッセージが、静かに、しかし力強く伝わってくる回でした。

ミドルシニアとしてこれからの働き方に悩んでいる方、キャリア支援に関わる方、そして「自分の人生を自分で選び直したい」と感じているすべての人にとって、この放送は多くのヒントを与えてくれます。ぜひ音声で、竹島さんの言葉の重みと温度をそのまま受け取ってみてください。

リブート合同会社
https://rebooot.jp/

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