

今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」は、広告制作会社で35年以上マーケティングの現場に立ち続け、現在は現役マーケターでありながら、ミドルシニアのキャリア支援にも取り組む「キャリアデザインマーケター」中井さんをゲストに迎えた、働く大人の心に深く響く回です。
今回の放送では、単なる仕事紹介にとどまらず、「長く働いてきた人が、もう一度自分の価値を見つめ直すとはどういうことか」という大きなテーマが、番組パーソナリティの瀧本との温かな対話を通して浮かび上がっていきます。
まず印象的なのは、「キャリアデザインマーケター」という肩書きに込められた中井さんの思いです。中井さんは、広告制作会社で長年マーケティングに携わり、100社以上のクライアントと向き合ってきた経験を持つ方です。しかも、定年再雇用後も現役のマーケターとして働き続けながら、キャリアコンサルタントとしてミドルシニア世代の支援も行っています。マーケティングとキャリア支援。一見すると別々の領域に見えるこの二つが、実は深いところでつながっているという話は、今回の放送の大きな聴きどころです。
中井さんは、マーケティングの基本は「自社や商品を理解し、競合や市場との関係の中で強みを見つけること」だと語ります。そして、それは個人のキャリアにもそのまま当てはまると言います。キャリア支援でも、いきなり「次に何をするか」を考えるのではなく、まずは自分自身を知ることが大切です。自分は何を大切にしてきたのか。どんな経験を積み重ねてきたのか。周囲からはどんな価値を発揮しているように見えていたのか。まさに、企業が自社の強みを分析するように、人もまた自分自身の「売り」や「持ち味」を丁寧に見つめ直す必要があるのです。
特にミドルシニア世代にとって、この視点は非常に重要です。長年、一生懸命働いてきた人ほど、自分の強みに気づいていないことがあります。本人にとっては「当たり前にやってきたこと」でも、実はそれが大きな価値だったということは少なくありません。一方で、50代を迎える頃には、役職定年、降格、配置転換、年下上司との関係など、これまでの働き方を揺さぶられる出来事も増えていきます。自分なりに会社へ貢献してきたはずなのに、急に評価されなくなったように感じる。これまで築いてきたものが否定されたように思える。そんな時、人は自己効力感を失い、自分の価値を見失ってしまうことがあります。
中井さん自身も、まさにそのような経験をされています。49歳の時、順調に積み重ねてきたキャリアの中で、突然、社内の出世コースから外れ、単身赴任を余儀なくされました。「なぜ自分なのか」「なぜこんなことになったのか」という思いを抱えながら、家族と離れて働く日々。その時の苦しさは、言葉の端々からも伝わってきます。さらに57歳の時には、年下の上司のもとで働く中、説明もないまま降格を知ることになります。しかも、それを社内ポータルの組織発表で初めて知ったというエピソードは、長年会社に尽くしてきた人にとって、どれほど大きなショックだったかを想像せずにはいられません。
けれども、この番組が胸を打つのは、そこからの中井さんの歩みです。やる気が出ない日々が続き、毎日が面白くないと感じる中でも、「まだ自分はやれる」という思いは消えていませんでした。今いる組織の中でやりたいことができないのなら、別の場所で自分の力を活かせないか。そう考えた中井さんが出会ったのが、仕事で培ったスキルを社会貢献に活かす「プロボノ」の活動でした。
このプロボノとの出会いが、中井さんにとって大きな転機となります。NPOや非営利団体のホームページ制作を支援したり、活動を広めるためのPR方法を一緒に考えたり、企業の社会貢献活動を対談形式で発信したりする中で、中井さんは自分のマーケティング経験が、まだまだ社会の役に立つことを実感していきます。初めて出会う人たちと3ヶ月、6ヶ月かけて一つのプロジェクトを進める経験は、新鮮で刺激的で、「自分にはまだできることがある」という感覚を取り戻すきっかけになったのです。
この話は、キャリアに悩むミドルシニアだけでなく、キャリア支援に関わるすべての人に聴いてほしい内容です。相談者が自信を失っている時、支援者はどう寄り添えばよいのか。長年の経験をどう価値として言語化していくのか。会社の中での評価と、その人自身の価値をどう切り分けて考えるのか。中井さんの語りには、理論だけでは語れないリアルがあります。自分自身が痛みを経験した人だからこそ、同じように揺らいでいる人に向けるまなざしが、とても温かいのです。
また、広告やマーケティングの世界の面白さについて語る場面も魅力的です。中井さんは、長年ダイレクトマーケティング、特に通販やネットショッピングに関わってきました。テレビ、新聞、雑誌、ネットなどで打ち出した施策の結果が、電話の本数や売上としてすぐに返ってくる。うまくいけば大きな手応えがあり、うまくいかなければ原因を探り、次の打ち手を考える。そのリアルタイム性と、クライアントや制作チームと一緒に成果をつくる喜びが、35年という長い時間を支えてきたことが伝わってきます。
中井さんは、営業プロデューサー的な立場として、デザイナーやコピーライターなど専門家の力をどう引き出すか、クライアントの思いと制作側の意見をどう調整するかにも向き合ってきました。意見がぶつかることもある。個性的な人たちの間に立ち、落としどころを見つけていくこともある。それでも、「いいものを作りたい」「成果を出したい」という共通のゴールを信じて進めてきた経験は、現在のキャリア支援にも確実につながっています。人の強みを見つけ、チームの力を引き出し、目指す方向を整えていく。それはまさに、キャリアコンサルティングにも通じる力です。
今回の放送を聴くと、「キャリアは会社の評価だけで決まるものではない」ということに気づかされます。昇進したか、降格したか。出世コースに乗ったか、外れたか。もちろん、それらは働く人にとって大きな出来事です。しかし、それだけでその人の価値が決まるわけではありません。長年かけて培ってきた経験、誰かのために動いてきた姿勢、困難の中でも自分の可能性を探そうとする力。それらは、会社の人事制度では測りきれない、その人自身の財産です。
今、仕事に少し疲れている方。これからの働き方に迷っている方。50代以降のキャリアに不安を感じている方。あるいは、そうした方々を支援する立場にあるキャリアコンサルタントの方。今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」は、そんな皆さんにぜひ聴いていただきたい放送です。中井さんの言葉には、華やかな成功談だけではない、働く人の痛みと回復の物語があります。そしてその先に、「自分の経験は、まだ誰かの役に立つ」という希望があります。
ミドルシニアのキャリアを考えることは、単にセカンドキャリアをどうするかという話ではありません。これまでの人生をどう受け止め、これからの時間をどう意味づけていくかという、とても大切な問いです。マーケティングの視点で自分自身を見つめ直し、強みや価値観を再発見していく。今回の放送は、そのヒントに満ちた30分です。働くことに迷いがある方ほど、中井さんの語りの中に、きっと自分自身を取り戻すための言葉を見つけられるはずです。
◆キャリアデザインマーケター|中井和宏ホームページ
https://kazuhiro-nakai.my.canva.site/
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