久保美紀さま(大学キャリア支援業界で学生の就職相談に携わるキャリア支援者)

今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」は、大学キャリアセンターの現場から、いまの学生たちのリアルな姿と、支援者がどのように関わればよいのかをじっくり聴ける回です。ゲストは、九州で公立大学と私立大学、2つの大学キャリアセンターに関わりながら学生支援を行っている久保美紀さん。瀧本自身も大学で学生支援に携わっているからこそ、今回の対談は単なる活動紹介ではなく、キャリア支援の現場を知る人同士だからこそ出てくる、実感のこもった深い話になっています。

番組の冒頭で印象的なのは、久保さんが学生との関係性を「フラット」に捉えていることです。キャリアセンターというと、学生からすれば少し堅く、就職のことで叱られたり、正解を求められたりする場所のように感じられることもあります。しかし久保さんは、入り口をできるだけ柔らかくし、「ウェルカムの状態」で学生を迎えることを大切にしています。学生が話しやすいように言葉を少し崩したり、相手の話すスピードに合わせたり、話したくなさそうな学生には無理に踏み込まなかったりする。その姿勢は、キャリア支援の基本でありながら、実際の現場ではとても難しいものです。

今回の放送を聞いていると、「学生を支援する」とは、正しい答えを教えることではなく、その学生が自分の言葉で考え、自分の選択に納得していく過程に寄り添うことなのだと感じます。3年生はインターンシップに向けて「何社行けばいいのか」、「どこに行けばいいのか」と相談に来る。4年生は内定を得たあと、「どちらの会社を選べばいいのか」、「懇親会に行くべきか」と迷いながら相談に来る。就活は内定が出たら終わり、という単純なものではありません。むしろ内定後にこそ、企業の空気感、同期の雰囲気、自分がそこで働くイメージが見えてきて、改めて迷いが生まれることもあります。

瀧本と久保さんの会話の中では、いまは「学生が選ぶ時代」になっているという視点も語られます。企業から選ばれるだけではなく、学生もまた、長く働き続けられる環境なのか、自分に合う職場なのかを見極める時代です。面接だけではわからない空気感を、懇親会や内定者同士の交流を通して体感する。そのうえで自分に合うかどうかを考えることは、就職活動の大切な一部になっています。

久保さんが現在の学生支援に向かうようになった背景には、地方自治体の就職支援の場での5年間の経験があります。そこでは新卒の学生だけでなく、転職希望者や幅広い年代の相談者と向き合ってきたそうです。その中で強く心に残っているのが、入社後わずか数日、あるいは1か月ほどで離職を決断した若者たちの姿でした。特に、卒業して就職したはずの学生が、ゴールデンウィークに「求職中です」と相談に来たエピソードは胸に残ります。本人が行きたいと思って選んだ職場であっても、現実にはミスマッチが起こる。そのミスマッチが、心身に大きな負担を与えることがある。久保さんはその現実を目の当たりにし、社会への一歩目を支えることの重みを改めて感じたと話します。

ここで大切なのは、早期離職そのものを単純に否定していない点です。辞めることが悪いのではなく、本当にその判断でよいのかを一度誰かと話してみることが大切なのだと久保さんは語ります。やめたいと思ったとき、その気持ちを誰にも言えずに抱え込んでしまう学生や若手社会人は少なくありません。親にも言えない、支援してくれた人にも言えない、ちゃんと働いている自分を見せたかったから相談できなかった。そんな繊細な思いが語られる場面からは、若者のキャリア支援に必要なのは、評価や説教ではなく、「言いにくいことを言っても大丈夫」と思える関係性なのだと伝わってきます。

番組後半では、久保さんがこの仕事に感じているやりがいについても語られます。それは、学生の成長を間近で見られることです。最初はうまく話せなかった学生が、少しずつ自分の考えを言葉にできるようになる。課題を出すと、次の面談で「ここまではできました」、「ここがわかりづらかったです」と持ってくる。文章の書き方が変わっていく。自己評価をしてもらい、その理由を一緒に確認する中で、学生自身が自分の変化に気づいていく。久保さんは、できるようになったことをきちんと「できるようになったね」と伝えることを大切にしています。学生本人は自分の成長に気づいていないことも多いからこそ、支援者がその変化を見逃さず、言葉にして返すことが必要なのです。

さらに今回の放送では、就職活動におけるAI活用についても自然な流れで話が広がります。久保さんも瀧本も、AIを使うこと自体には肯定的です。ただし、AIが出した文章をそのまま貼り付けるのではなく、自分の言葉として読み返し、自分の感情や経験に合っているかを確認することが重要だと語られます。エントリーシートと面接はつながっています。書類に書いた言葉が本人の実感から離れていると、面接でうまく語れなくなってしまう。だからこそ、AIを便利な道具として使いながらも、最後は自分の言葉に戻していく作業が欠かせません。

この回の魅力は、キャリアセンターの仕事を美談として語るのではなく、現場の難しさ、学生の揺れ、支援者の葛藤まで含めて、等身大で語られているところにあります。学生が元気に見えても、内側では迷いや不安を抱えていることがある。早く内定が出ても、入社までの時間にまた悩むことがある。就職してからも、ミスマッチに苦しむことがある。だからこそ、学生支援には、情報提供だけでなく、相手のペースに合わせて話を聞き、本人が自分の選択を言葉にしていくための関わりが必要なのです。

就活生を支援している方、大学キャリアセンターの現場に関心がある方、若手社員の早期離職や職場定着に課題を感じている企業の方、そしてキャリアコンサルタントとして学生支援に関わりたい方にとって、今回の放送は多くの気づきがあるはずです。「今どきの若者は」とひとくくりにするのではなく、一人ひとりのペース、言葉、迷い、成長をどう受け止めるのか。そのヒントが、久保さんの穏やかな語りと瀧本の現場感ある問いかけの中に詰まっています。

学生の未来を支える仕事は、派手ではありません。しかし、面談の中で交わされる一言が、その人の進路選択を支え、入社後の踏ん張りにつながり、時には人生の大きな分岐点を支えることもあります。今回の「瀧本博史の元気にはたらこ!」は、そんなキャリア支援の本質を、現場の温度そのままに感じられる放送です。就職支援に関わる方はもちろん、若者との関わり方に悩むすべての方に、ぜひじっくりと聴いていただきたい内容です。

◆ミキネェ(久保美紀)note
https://note.com/ma2oui

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